「お散歩カメラ」考 その2(G1 X Mark III編)

はじめに

昨今の「お散歩カメラ」(主にレンズ一体型の高級コンデジ)人気と高騰を受け、またそろそろこの手のカメラが欲しくなってきたので、私がこれまでに使ってきた「お散歩カメラ」達の長短を振り返ることで頭の整理をしています。

第1弾として、発売当初は「中途半端なカメラ」として不遇をかこっていた感のあるCanon G1 X Mark IIIについて語っていきたいと思います。

ご参考ですが、私の「お散歩カメラ」遍歴については下記リンクを参照ください。

「G1 X Mark III」考

G1 X Mark III 外観。キヤノンらしい精悍なデザイン。

私の機材遍歴においてはNikon Z50への乗り換えという形で一旦役目を終えているこのカメラですが、総じて、一癖あるもののまだまだ現役で行ける(2024年7月現在)カメラだと思います。その最たるものがDP CMOSによる高いAF性能でしょう。当時、頑なに像面位相差AFを採用しないことで画質を損なっていると叩かれまくっていたキヤノンの独自技術ですが、このEOS 80DやM5、M6と同世代のAPS-C 2400万画素センサーは、個人的には「全然イケる」センサーです。「撮りたいものを、ピンボケせず撮れる」というのはお散歩カメラの必須要件で、ピンボケしていては記録にならないので画質は二の次だと思っています。正直、「像面位相差」を謳いながら迷いまくるGR IIIのAFに絶望した人達がこのカメラに流れてきているのでは?などと勝手に想像しています。色々な会社のカメラを使ってみて改めて感じるのですが、C社、N社のカメラはやっぱり凄いです。(S社のカメラは宗教上の理由であまり使っていないのでわかりません…)

ただ、二の次とは言ったもののやっぱり気になるのは画質です。このカメラの叩かれポイントとして「小型化のためにレンズ性能を犠牲にしているのでAPS-Cセンサーの割に画質が悪い」という言説があり、昔(私調べで)あまり人気がなかった主要因は、この「画質の中途半端さ」にあるのではないかと思っています。

実際、下記画像のように、絞り開放の近接描写が甘いところはあると思います(余談ですが当時G7 Xシリーズも近接のにじみがネガキャンのポイントになっていた気がします)。

G1 X Mark III, ISO160, 45mm(換算72mm), f5.6, SS1/160

ただ、この程度の甘さであれば絞れば解消しますし、ある意味レンズの味とも言えるのではないかと思っています。

もう一点、このカメラの画質には、jpg撮って出しがなぜか抑揚のないのっぺりした画になる/微妙に黄色に転ぶという難点を感じていました(適当なサンプルがなくすみません)。おそらく、このカメラがあまり評価されていなかった一因ではと勝手に想像しています。私も使い始めた当初はガッカリしていましたが、色々試しているうちに、どうやらこのカメラの基準露出はちょっとオーバー気味なのではということに気付きました。実際、アンダー目に撮ってraw現像してやると、1型センサーとは一線を画す現像耐性も相まって結構良い感じの画になります。

G1 X Mark III, ISO160, 15mm(換算24mm), f8, SS1/60
G1 X Mark III, ISO250, 34mm(換算54mm), f8, SS1/125

高感度耐性も悪くは無いと思います。私も結構お世話になった80DやM6と同世代のセンサーですから、悪いはずがないと思います。

G1 X Mark III, ISO3200, 45mm(換算72mm), f5.6, SS1/125

さすがにSS1/15以上では厳しさを感じ始めますが、手振れ補正も十分効きます。個人的にはほぼ1/125以下で運用していたので無問題ですね。外装の手触りも結構良い感じの高級感がありますし「EOSを継承した『なで肩』デザイン」も結構好きです。その他のネガティブな点を挙げるならば、沈胴レンズの繰り出しにより電源ONから撮影可能になるまでの時間が長い点、その一方で電池の持ちが悪いので電源入れっぱなし運用ができないといった点がありますが、個人的にはそこまでこの点を致命的に感じたことはありませんでした。いざとなればUSB充電もできますし。

ではなぜ手放したのか?

なんだかこのカメラの良いところばかり書いてしまいましたが、結局私はこのカメラをZ50と引き換えに手放しています。当時このカメラの何が問題だったかを振り返ってみると、

  • 納得いく画を作るにはraw現像が必要だが、やっぱり手間がかかる
  • サイズとのトレードオフではあるが、グリップが小さいので片手で運用しにくい
  • 4k動画が撮りたくなった
  • 236万画素あるが、さすがに最新機種に比べるとEVFが見にくい
  • キヤノン特有のヒエラルキーによりISOオート時のSS低速限界が設定できない

といったところだったと記憶しています。Z50+16-50mmなら、サイズは少し大きいですが上記の不満を全て解決してくれますからね。やはり哀しいかな、基本的にデジモノは新しい物ほど良いのです。近年のデジカメについて言えば、他の何をおいてもEVFだけは、古いものが新しいものに勝てないポイントなのではないかと思います。「エモい」路線に行くしか、時代の流れで陳腐化する宿命を負ったデジモノが輝く術はないのでしょうか。昨今の少し古い「お散歩カメラ」達の高騰は、スマホ全盛の時代に不遇をかこった者たちの最後の輝きなのでは、と思ったりもします。

おわりに

昔撮った画像たちを懐かしく振り返りながら、つれづれなるままにG1 X Mark IIIの思い出を書きつらねてみましたが、このカメラ、やっぱり良いカメラですね。いちオタクの立場では、後継機希望やら改善点やらを分不相応に述べたてるわけにもいかず、ただただこの商品を生み出してくださった商品企画者や開発者、製造者の方々にこの場をお借りして御礼を申し上げるばかりです。ありがとうございました。

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