LEICA TL2 レビュー
はじめに
本ブログ最初のレビューを行う機材は、今年5月に購入し1週間で手放してしまった、LEICA TL2です。
さて、こんな私ですが、機材購入に際しては、いくら新宿の防湿庫から実質無料(主観)で出し入れしているだけといえども、それなりに考えて購入に至っています。私の購入動機は常に最高の機材の探求にあるので、一つの購入につき必ず
- 購入の目的(何を実現したいか)
- 購入した結果(実現したいことは叶えられたか)
- なぜ手放したか(実現したいことが全て叶えられたとしても、売却しない理由にはならない)
というドラマが内包されています。今後のレビュー記事においては上記3点を明らかにしながら機材遍歴を振り返っていきたいと思います。なお辛口な内容も含みますが、これらの内容はあくまで私の主観ですのでご理解ください。
購入の目的
私は本記事を執筆している時点でLEICA SL(typ601)を愛用しています。しかし、なんだかんだでデカくて重いシステムなので、私は次第に「普段使いのライカ」というテーマを思い描くようになりました。このテーマをもう少し噛み砕くと
- 軽快な操作性(小型軽量であることを含む)
- ライカならではの画質
- ライカならではの所有感
といったところでしょう。そして、これを満たす手段として私が白羽の矢を立てたのが
AFが使える小型の「ライカ製」レンズ
でした。AFが使える小型のライカ製レンズといえば、APS-CのTLマウントレンズです。SL用のアポズミクロンシリーズは、SL用レンズとしては比較的小型軽量などと言われますが、700gクラスの金属鏡筒レンズですから十分デカいし重いです。何より50万円超のレンズをぶら下げて気軽にお散歩できるほど肝が据わっておりません。その点TL用のレンズであれば、MADE IN JAPANではありますが立派なライカ銘ですし、小さく軽く比較的安い(もちろん一般的には十分すぎるほど高い)。私の興味は俄然APS−Cライカに傾きはじめました。※SLにTLマウントレンズをつけるという方法もありますが、これは画素数が1000万画素までクロップされてしまうので却下しました。
2021年6月現在、APS-Cマウントのレンズ交換式ボディとしてはCLとTL2がラインナップされています。発売時期はほぼ同じですが、中古価格としてはTL2のほうが10万円ほど安いです。しかし値段以上に私が惹かれたのは、その美麗な外観デザインでした。アルミ削り出しの外装を熟練の作業員が手作業で磨き上げているなんて、ロマンの塊としか言いようがありません。私は同じくアルミ削り出しボディのライカSLの質感をこよなく愛しています。ネットの写真でしか外観を見たことがない状態でしたが、私はこのカメラの質感が、普段遣いのSLたり得ると確信しました。
一方、現在ネットに出回っているライカTL2のレビューの多くで、AF性能と画質に関して辛口のレビューがなされています。
- AF性能…十分速いが、光量が落ちるところではとても迷う
- 画質…ホワイトバランスがおかしい
といったところでしょうか。AF性能についてはレンズに依存するようですが、私が購入に至ったエルマリート18mmはAFの速いレンズだという評判ですし、そもそも日中の散歩用カメラと割り切っていたので、暗所で使わなければ良い、くらいの認識でした。ホワイトバランスがおかしい件もレビュー等で認識してはいましたが、元々RAWで撮ってLightroomで現像するつもりだったので、多少色がおかしくてもさほど問題にはならないと考えました。そんなわけで、私の手元にLEICA TL2 + ELMARIT-TL 1:2.8/18 ASPH. が届いたのでした。
購入した結果
こうして手元にLEICA TL2 + ELMARIT-TL 1:2.8/18 ASPH.がやってきました。前項の再掲となりますが、私はこの機材に
- 軽快な操作性(小型軽量であることを含む)
- ライカならではの画質
- ライカならではの所有感
を求めていました。これら3つの観点を軸に、私の体験を振り返っていきます。
1. 操作性
このカメラを使ってみて最も意外だったのが、その操作性でした。特徴的な形状と、ボタンが殆ど無いという特徴的なUIを備えているがゆえに、このカメラの使いこなしには時間を要するであろう、というのが当初の予想でした(そして、使いにくさをライカならではの所有感が上回り、このカメラを長く愛していくだろう、とも)。しかし、その予想は、ハード面において良い意味で裏切られることとなりました。なぜならこのカメラ、物凄くグリップしやすいのです。独特のUIについてもさほど難しいということはなく、説明書を読まずに難なく全ての設定にアクセスすることができました。
また、AFに関しても想定よりはずっと良い、という感想でした。絞りをf8にして、(少し使いにくい)タッチフォーカスによりピント位置を合わせれば、意外なほど素早く「スッ」とピントが移動してくれます。そして精度も(後述のように撮影現場では確認できないのですが)なかなか高いです。スナップカメラとして十分な資質を備えていると感じました。
とはいえ想定より残念だったこともいくつかあります。まず予想以上に液晶が見にくい。3.7型130万ドットの十分に大きいディスプレイですが、屋外で使うとあまり鮮明に見えず、ピントが合っているのかどうか分からないのです。これには閉口しました。
また、手元のMマウントレンズをアダプタで使ったり、手持ちの小型LマウントレンズであるSIGMA 45mm F2.8 DG DN | Contemporaryを換算67.5mmの中望遠レンズとして使っても面白いだろうと考えましたが、少し残念だったのが、レンズに対しボディが軽いので、小型のレンズ(例:SUMMICRON 50mm 4th)であっても装着するとレンズの重みでボディがお辞儀する、という点でした。細かすぎて共感が得られないかもしれませんが、案外このような微妙なモヤモヤポイントが積み重なり、だんだん「な〜んかしっくりこないな〜」という感じになってくるものです。また、SIGMA 45mm F2.8 DG DN | Contemporaryとの組み合わせにおいては、AFは特に問題なく作動したものの、レンズの絞りリングを操作してもカメラ側で認識されない(絞りリングの操作に対応していない)という点は、触れておくべき点でしょう。LEICA SLもSIGMA製DG DNレンズのレンズ側スイッチを認識しなかったりするケースが多いですし、この互換性の乏しさはLEICAを使うという選択をした以上は諦めるべきところなのでしょう。
2. 画質
撮影テストを兼ねて、その辺の電柱を撮ってみました。jpg撮って出し、この色が全てです…何故だかホワイトバランスがおかしい。屋外でも屋内でもおかしい。また、ピントが来ていないわけではないのですが、どこかボヤッとした仕上がりになってしまうのです。ホワイトバランスについては、DNGで撮影しLightroomでAdobeのカラープロファイルを当てればある程度改善されるものの、「微妙にボヤっとする」仕上がりについては頭を悩まされることになりました。LEICA SL(typ601)と画作りが異なる点も気になりました。LEICA SLは、こちらもまた一癖ある色合いではあるものの、陰影が強調された「画になる」画作りがパッと出てくるので、これは単純に私の好みの問題ですが「うーん、これはSLとは併用できないな」という感じになってしまいました。
3. 所有感
操作性は気になるところを我慢すればなかなか、画質は…まあ我慢すればなんとか…ときたら、最後は所有感です。これは私がTL2購入にあたり最も期待した部分です。しかし結果として、ここがあまり期待に沿わないという結果になってしまいました。
Leica SL(typ601)のボディの質感は、本当に圧巻の一言です。持った瞬間に「こいつはモノが違う」と直感する凄みがあります。TL2も同じアルミ削り出しボディ(しかも手仕上げ)ということで、手に持った瞬間に「モノが違う」となるものと思っていたのですが、思ったより軽く(軽いのは携帯性としては良いことなのですが…)、またダイヤルの感触も「普通の」デジカメのような、慣性感、粘性感をあまり感じない、軽くザラザラした感触だったため、「まあこんなものか」となってしまいました。うーむ、定価で3倍以上するSLと比べてしまったのがダメなのかもしれません。逆に言えばSLというカメラが2021年現在、いかにお買い得なカメラか、ということを思い知らされる結果になってしまいました。またレンズのピントリングの感触についても、Mマウントのズミクロンのような滑らかなものではなく、少し樹脂がこすれるようなザラザラとした感触が手に残るもので、こちらについても残念なことに、あまり期待に沿わない結果となってしまいました。
まとめ(結局手放した理由)
「普段使いのライカ」を求め、小型・AFのTLシステムに白羽の矢を立てた今回の購入でしたが、残念ながら私の意に沿う結果とはなりませんでした。基本的な操作性としてはツボを押さえたカメラで、ホワイトバランスの問題もなんとか運用でカバーできる範囲のものだと思いますが、結局、操作性や画質に対する地味な我慢の積み重ねを跳ね除けるような絶対的な「ライカ感」を感じるには至らず、それゆえ敢えて無理して持ち出すカメラではないな…となってしまったのでした。現在は、4k動画への対応を除けば同等以上のスペックで、より小型のGR3などが気になっていますが、それなりの外出にはSLを持っていくし、日常の散歩においてはiPhoneで十分かなという妥協もあり、結局購入に踏み切れていないのが現状です(でも、きっといつかはGR3を買うのでしょうが…)。
「最高の機材」の探求は今後も続きます。
最後まで読んでいただきありがとうございました。